「死ぬまでに観たい映画1001本」より、コーエン兄弟の監督作品で、アカデミー賞で作品、監督、脚色、助演男優賞を受賞した作品『ノーカントリー』を鑑賞。
一言で言えば、めちゃめちゃ面白い映画でした!
全てを説明してくれるタイプの映画ではないので、それぞれのキャラクターの行動の動機など、推測するしかないところが多い映画ではありますが、ストーリー自体ははこれ以上ないってくらいシンプル。
ひょんなことからとある組織にの麻薬密売に関わる大金を手にしてしまった男が、組織が雇った殺し屋に追いかけられて命を狙われる、というだけの話です。
ただもう、“殺し屋”であるシガーという男の存在感がとにかくすごい!
変な髪型&変な服装の見た目の存在感も凄いし、使っている武器も異常。
「顔」、というか「貌」のインパクトがまずすごい!
そして、不意に見せる笑顔っぽい表情が恐ろしく不気味!
しかも、タイミング的に何故そこで笑顔を見せるのかがよくわからないところが超怖い!
さらに、表面上は理論整然と話しているっぽいのに、まったく話が通じていない感じも超怖い!
とにかく、キャラクターの異常性が突出しています。
いやー、何なんでしょうこのキャラクター。
『ダークナイト』のジョーカーのような、現実世界から逸脱した「悪魔」そのものな“悪”とも違う。
『冷たい熱帯魚』の村田(でんでん)のような、どこまでも己の欲望に忠実な“悪”とも違う。
『ドラゴンボール』の魔神ブウ(純粋悪)のような、“悪”そのものというべき“悪”とも違う。
何を目的に生きているのか、何に従って行動しているのか、何のために“悪”を行使するのか。
それが全く見えない、このシガーという男。
この特異性、この唯一無二の存在感。これを生み出せた時点で、この映画は“勝ち”だな〜、と思ってしまいます。
いやー、すごい。
ただ、一つケチをつけるとしれば、『ノーカントリー』という邦題でしょうか。
原題の『No Country for Old Men』であれば、“おっさんの住む国はねぇ!”ってことで、トミー・リー・ジョーンズが肌で感じているっぽい“最近のアメリカという国の住みづらさ”“理想の国としてのアメリカの消失”を表現しているタイトルだとわかるんですが、『ノーカントリー』だともう意味不明!!
ただでさえ、何を描いている映画なのかが分かりにくい映画を、さらに難解なものにする邦題になってしまっている気がします。
もちろん、明確な結論を描かない映画だけに、抽象的なタイトルでさらにその輪郭をボカすという意図があったのかもしれませんが、もう少し原題に即したタイトルでもよかったのかなーと思いました。
まあ、そういう不満もあるものの、そういうことを帳消しにできてしまうほど強烈なキャラクター「シガー」を誕生させたという一点で、この映画はサイコーな傑作!
文句なしに「死ぬまでに観たい映画」でした。
作品概要
2007/アメリカ 上映時間:122分
原題:No Country for Old Me
配給:パラマウント、ショウゲート
監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウッディ・ハレルソン
<あらすじ>
1980年の米テキサスを舞台に、麻薬密売人の銃撃戦があった場所に残されていた大金を盗んだベトナム帰還兵(ブローリン)と殺し屋(バルデム)の追跡劇、そして2人を追う老保安官(ジョーンズ)の複雑な心情が描かれる。原作はピュリッツァー賞作家コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」(扶桑社刊)。
[ via ノーカントリー : 作品情報 – 映画.com ]
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